この記事では、鉄筋コンクリートの仕組みについて紹介していきます。
鉄筋コンクリートとは、コンクリート内部に鉄筋を配置した構造材です。現代に世界の建物の多くに鉄筋コンクリートは使用されています。それほど安定した構造材であり、インフラを支えているのが鉄筋コンクリートです。
鉄筋コンクリートは、圧縮に強く引張に弱いコンクリートを引張に強い鉄筋で補強したものです。鉄筋コンクリートの基礎に関しては、以前まとめた記事がありますのでそちらをご覧ください。
では本題の鉄筋コンクリートの仕組みについて入っていきましょう。
目次
鉄筋コンクリートの構成材料と役割
さて、ここで鉄筋コンクリートの構成材料とそれぞれの役割について復習します。
記事冒頭でも少し触れましたが、鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートで構成されています。これは名前の通りなので知っている方が多いでしょう。それぞれの役割について確認します。
コンクリートの役割
まずはじめにコンクリートの役割から紹介します。
コンクリートとは、圧縮に強く引張に弱い構造材なのでした。よって鉄筋コンクリートにおけるコンクリートの役割は、圧縮力を負担することです。これがコンクリートの第一の役割となっています。
鉄筋の役割
上では鉄筋コンクリートのコンクリートの役割について書きました。次に鉄筋コンクリートにおける鉄筋についてです。鉄筋はご存知の通り、鉄でできています。ではそんな鉄筋は鉄筋コンクリートにおいてどんな役割を果たしているかについて紹介していきましょう。
鉄筋の役割:引張鉄筋
鉄筋の第一の役割は、引張力を負担することです。コンクリートが引張に弱い素材ですから、鉄筋はそれを補います。また、この引張力を負担する(コンクリートを補強する)ということは、靭性を付与するということでもあります。
靭性とは?
靭性とは、イメージしやすくいうと「粘り強さ」のことです。例えば下の図のように、両端支持梁に荷重が作用していたとします。
この梁に鉄筋が入っていなかった場合、は下の図のように折れてしまいます。
しかしこの梁に鉄筋が入っていた場合は、下の図のように簡単に折れずに持ちこたえます。
この粘り強さのことを靭性と言います。
このように鉄筋は、無筋コンクリート(鉄筋の入っていないコンクリート)に配置することで、靭性を与えます。
鉄筋の役割:圧縮鉄筋
次の鉄筋の役割は、圧縮力を負担することです。コンクリートは圧縮力を負担するのが役割でしたが、鉄筋も圧縮力の一部を負担します。
鉄筋が圧縮力の一部を負担することによって、靭性が改善されたり、クリープ・乾燥収縮などの破壊現象のリスクが低減されます。
乾燥収縮とは?
ここで、乾燥収縮についておさらいしておきましょう。
乾燥収縮とはコンクリートを固める際に起きる収縮現象などを指します。コンクリートは水とセメント、砂や砂利を混ぜて作られますが、乾かして固める際に水分が飛びますので、体積が小さくなります。このことを乾燥収縮と呼びます。
また、乾燥収縮が起きるのはコンクリートを固める時だけではありません。コンクリートを固めた後にも少しずつ起こります。これによって乾燥収縮は微小ながらも常に起こっていると考えられますので、それによってコンクリート造には寿命が存在します。
余談ですが、コンクリートの寿命を決めているのは乾燥収縮の速さだけではありません。
クリープについては、以前まとめた記事がありますので、そちらをご覧ください。
鉄筋の役割:せん断力を負担する
鉄筋は、鉄筋コンクリートに働くせん断力も負担します。せん断力を負担する鉄筋には、いくつか名称があります。
- スターラップ:梁を補強するために主筋を囲んで巻く鉄筋。
- フープ(帯筋):柱の主筋を補強する鉄筋。
- 折り曲げ筋:その名の通り折り曲げて使う鉄筋。
- X型筋:X型にクロスして使う鉄筋。
- スパイラル筋:高層の柱などに螺旋状に巻いて補強する鉄筋。
せん断補強筋には上記のような種類があります。「こんなのがあるんだぁ」程度に覚えておいてください。
コンクリートと鉄筋の相互作用について
ここまでコンクリートと鉄筋の構成と役割について説明してきました。ここからはコンクリートと鉄筋がどのように双方に効果を及ぼしているかについて書いていきます。
コンクリートと鉄筋の一体性について
コンクリートと鉄筋を用いて鉄筋コンクリートは構成されますが、2つの素材を使っているということは、それぞれが一体となっていなければなりません。例えば鉄筋コンクリートが変形したときに、コンクリートだけ変形し、鉄筋は全く変形しないという状況が起こってしまうと、鉄筋コンクリートとして一体性を保っていないことになってしまいます。
鉄筋とコンクリートの一体性を保つためには、工夫が必要です。一般に異形鉄筋を使ったり、定着長さの確保をします。
異形鉄筋とは下の画像のような鉄筋です。
画像出典:http://www.asahi-kg.co.jp/steel/detail/1
この鉄筋のように表面を加工することで、コンクリートとの一体性を改善します。コンクリートと接触する面積を増やすことで摩擦力を増やし、コンクリートとのズレが起きないようにします。
次に鉄筋の定着長さについてです。定着長さとは、鉄筋コンクリートのおいて、鉄筋がどれだけコンクリートと定着しているかです。下の図をご覧ください。
灰色部分がコンクリート、藍色が鉄筋だと思ってください。上の図の左と右では、右の鉄筋コンクリートの方が鉄筋が抜けにくい(鉄筋とコンクリートが一体化している)ことは想像しやすいでしょう。
このように鉄筋コンクリートの定着長さを確保することで、鉄筋とコンクリートの付着力が向上します。
鉄筋とコンクリートの線膨張係数について
鉄筋とコンクリートが鉄筋コンクリートとして使用される最大の理由は、鉄筋とコンクリートの線膨張係数が非常に近いからです。鉄筋とコンクリートの線膨張係数(熱膨張係数)は、約1.0×10^(-5)です。この値は覚えて起きましょう。
線膨張係数に関しては以前まとめた記事がありますので、知りたい方はそちらを参照してください。
まとめ
今回は鉄筋コンクリートを構成している鉄筋とコンクリートの役割、それから鉄筋コンクリートの相互作用について紹介しました。
コンクリートは主に圧縮力を負担、鉄筋は引張力を負担しているのでしたね。これは鉄筋コンクリートの基礎となりますから、覚えておきましょう。
また、鉄筋コンクリートの一体性を保つための工夫や、鉄筋とコンクリートの線膨張係数について紹介しました。この記事を何回か読んで、ぜひ理解を深めてくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
鉄筋に変えて炭素繊維やアラミド繊維をコンクリートに配置した場合、線膨張係数が違う影響によりコンクリートにひび割れなどの変状が現れることはあるでしょうか。
高野茂晴さん
コメントどうもありがとうございます。
繊維によるコンクリート影響についてですが、繊維は非常に細く小さなものであるため、膨張の影響も少ないです。よって、コンクリートのひび割れのような形状への影響はほぼありません。
【補足】
鉄筋に代わって繊維を使うことは非常に稀です。繊維をコンクリートへ使用する例としては、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)としてコンクリートの外側に使用して補強するなどがあります。