この記事では鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートの役割について紹介していきます。
そもそも、かぶりコンクリートとは何でしょうか。かぶりコンクリートは鉄筋コンクリートの耐久性や寿命を決める非常に重要なものです。かぶりコンクリートの基礎から少し発展的な内容まで幅広く説明します。
目次
かぶりコンクリートとは?
下の図をご覧ください。
図の斜線部分を鉄筋コンクリートのかぶりコンクリート呼びます。言葉でかぶりコンクリートを表すならば、かぶりコンクリートとは、コンクリート表面から最も外側にある鉄筋の間にあるコンクリートのことです。
かぶりコンクリートは建物自体の寿命を決める重要な役割を持っています。それをここで紹介していきましょう。
かぶりコンクリートのかぶり厚さについて
かぶりコンクリートにはかぶり厚さという概念があります。かぶり厚さとは、鉄筋コンクリートにおいてコンクリート表面と最外側鉄筋までの距離のことです。下の図の部分の距離がかぶり厚さです。
かぶり厚さはコンクリート表面から最外側鉄筋までの距離でしたが、最外側鉄筋はだいたいせん断補強筋です。
せん断補強筋とは?
鉄筋の主な役割は、鉄筋コンクリートの引張力を負担することです。せん断補強筋とは、鉄筋コンクリートの鉄筋の中でもせん断力を負担するものを指します。せん断補強筋にはいくつか種類があります。
- スターラップ:梁を補強するために主筋を囲んで巻く鉄筋。
- フープ(帯筋):柱の主筋を補強する鉄筋。
- 折り曲げ筋:その名の通り折り曲げて使う鉄筋。
- X型筋:X型にクロスして使う鉄筋。
- スパイラル筋:高層の柱などに螺旋状に巻いて補強する鉄筋。
全てを覚える必要はないので、「こんなのがあるんだぁ」程度に知っておいてください。
せん断補強筋の他にも、鉄筋の役割について以前まとめた記事がありますので、気になる方はそちらを参照してください。
さて、本題に戻りましょう。次はかぶりコンクリートの役割について詳しく解説していきます。
かぶりコンクリートの役割について
かぶりコンクリートには鉄筋コンクリートを構造として強くするための様々な役割があります。代表的なのは以下のものです。
- 鉄筋の発錆防止
- 鉄筋の耐火性の確保
- 鉄筋の座屈を防止
ではこれらを一つ一つ解説していきましょう。
かぶりコンクリートの役割:鉄筋の鉄筋の発錆防止
かぶりコンクリートには鉄筋コンクリートの鉄筋部分に発生する錆びを防止する役割があります。鉄は錆びると強度が非常に落ちてしまいますから、かぶりコンクリートはなくてはなりません。
かぶりコンクリートが大気や室内の空気にさらされることで、中性化してしまいます。かぶりコンクリートが全て中性化してしまうと、かぶりコンクリートはすぐに発錆し始めます。
かぶりコンクリートには、中性化の速度式があります。
T = 7.2x²
(T:時間, x:かぶりコンクリートの厚さ[cm])
この式からもわかるように、かぶりコンクリートが中性化するのにかかる時間は、かぶりコンクリートの厚さによって決まります。かぶりコンクリートが厚いれば厚いほど、かぶりコンクリートの中性化が遅くなります。そのため、かぶりコンクリートの厚さを確保することは非常に重要であり、また建物の寿命を伸ばすことにもつながります。
かぶりコンクリートの役割:鉄筋の耐火性の確保
かぶりコンクリートの次の役割は、鉄筋の耐火性を確保することです。鉄筋は600[℃]で常温の約1/3ほどの強度しかなくなってしまいます。鉄筋が600[℃]の温度までいくことはほとんどありませんが、温度が上がると強度は下がってしまいます。強度の低下を防ぐために、かぶりコンクリートを用いて熱が鉄筋に伝わりにくくし、耐火性を確保することができます。これが被りコンクリートの2つ目の役割です。
かぶりコンクリートの役割:鉄筋の座屈の防止
座屈現象はご存知でしょうか。下の図をご覧ください。
座屈とはこのように荷重がかかったときに材料が曲がる変形をしてしまう現象のことです。イメージとしては垂直においた乾いた春雨を上から指で押すとグニャっと曲がることがイメージできるでしょう。このように細長い物体では荷重に対して曲がる変形である座屈を起こします。座屈現象に関しては以前詳しくまとめた記事がありますから、そちらを参照してください。
かぶりコンクリートは鉄筋コンクリートの鉄筋の座屈を抑える働きをします。座屈は柱などでは非常に危ない現象ですから、かぶりコンクリートを用いて鉄筋を補強しなければなりません。
まとめ
今回は鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートについて解説しました。かぶりコンクリートのかぶり厚さは建物の寿命を決める重要なものであり、またかぶりコンクリートには様々な役割があるのでした。何度かこの記事を読み返しながら、鉄筋コンクリートの知識を深めて行ってください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。