今回はオイラーの理論式から座屈応力を求める計算例題を紹介しましょう。
座屈とは長柱に大きな圧縮荷重が作用することで、長柱が歪んでしまう現象のことでした。
今回は座屈現象が起こる前に発生する、座屈応力の計算問題を取り扱っていきましょう。
この演習問題を解いていくためには、オイラーの理論式の知識が欠かせません。まだオイラーの理論式についてわからない方は、下の記事から復習をしてからトライしてみてください。
では早速問題を見ていきましょう。
演習問題1 :座屈応力を求める問題
長さ2.5[m]、断面寸法80[mm]×40[mm]で両端を固定した軟鋼性の柱の座屈応力をオイラーの理論式から求めなさい。縦弾性係数(ヤング率)を206[GPa]とします。
解答例
では早速解答例を見ていきましょう。
まず初めにオイラーの理論式から求められる座屈応力の公式はどんなものだったかを復習しましょう。
σ = n × π²E/λ²
(σ:座屈応力[MPa]、n:端末係数、E:縦弾性係数(ヤング率)[GPa]、λ:細長比(=l/k))
端末係数nとは、柱の座屈に影響する柱の支持方法を係数として扱ったものでした。両端を固定している場合の端末係数n=4ですので、nには4を代入して計算していきます。
公式にある細長比λを計算するために、断面二次半径kを求めます。断面二次半径とは断面二次モーメントIを断面積で割った値の平方根をとったものです。それでは計算していきましょう。
断面積A = bh、長方形断面の断面二次モーメントI = bh³/12
∴断面二次半径k = √(I/A) = √(bh³/12bh) = √(h²/12)
値は最後に代入するため、ここでは文字のままとします。
次に細長比λを求めます。オイラーの理論式における細長比はλ²で計算しますから、λ²を求めます。
細長比λ = l/k = l/{√(h²/12)}
∴λ² = 12l²/h²
では座屈応力を求めていきましょう。最小断面二次半径として計算をしますから、hには断面の短い方の40[mm]を代入して計算します。
座屈応力σ = n × π²E/λ² = n × π²E/(12l²/h²) = nπ²Eh²/12l²
= 4×π²×206×10³×40²/(12×2500²) = 173.5[MPa]
答え
座屈応力:173.5[MPa]
演習問題2:座屈応力(断面寸法を変えた場合)を求める問題
長さ2.5[m]、断面寸法100[mm]×50[mm]で両端を固定した軟鋼性の柱の座屈応力をオイラーの理論式から求めなさい。縦弾性係数(ヤング率)を206[GPa]とします。
解答例
演習問題1と同様の条件で、断面寸法だけ変えた座屈応力を求める問題です。この場合の座屈応力は演習問題1の時と比べてどうなるかも含めて計算をしていきましょう。
演習問題1で計算したものを、もう一度利用して答えを求めましょう。演習問題1と異なるのは、座屈応力を計算するときに代入するh(=50[mm])の値だけなので、そこだけ変えて計算します。
座屈応力σ = n × π²E/λ² = n × π²E/(12l²/h²) = nπ²Eh²/12l²
= 4×π²×206×10³×50²/(12×2500²) = 271.1[MPa]
答え
座屈応力:271.1[MPa]
演習問題1と演習問題2の答えを比較して、断面寸法がどのような座屈応力に影響するかを考察しましょう。
演習問題1では、長方形断面寸法が80[mm]×40[mm]で、その時の座屈応力が173.5[MPa]でした。それに対して演習問題2は、長方形断面寸法が100[mm]×50[mm]で、その時の座屈応力が271.1[MPa]です。
今回の問題では、座屈応力に変化を与える要因だったのは、最小二次半径で使う長方形断面の短い辺でしたので、材料の短辺の40[mm]か50[mm]かの違いでこれだけの座屈応力の変化が生じたことになります。
そもそも座屈応力とは、材料内に発生する応力が座屈応力を超えてしまうと、座屈が発生するというものです。よって座屈応力は大きければ大きいほど座屈に対して強い材料であるということができます。
今回の問題の演習問題1の座屈応力は173.5[MPa]、演習問題2は271.1[MPa]でした。つまり、座屈応力の大きい演習問題2の材料の方が、座屈に対して強い材料であることがわかります。
まとめ
今回は座屈応力を求める演習問題を紹介しました。座屈応力はオイラーの理論式から求めるということを覚えておいてくださいね。
また、長方形断面寸法と座屈応力の関係についても書きました。通常応力は断面積が大きくなるほど小さくなりますが、座屈応力は断面の大きさではなく細長比(断面がどれだけ細長いかを示す比)が影響を及ぼします。このこともなんとなく頭に入れておくとイメージがしやすくなるでしょう。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
座屈応力が大きい方が座屈による破壊が起きにくいと言うことではありませんか?
断面の短辺の長さが大きい方が座屈応力に関して2乗で効いてくると言うことだと思いますが。柱の形状とヤング係数によって、その柱の座屈破壊に対する許容応力を示している数値だと思います。思い違いかもしれませんので、ご指導方宜しくお願いいたします。
先ほどお送りした内容で、早速一つ間違いがありました。許容応力では無く破壊応力でした。
鹿渡愼一郎さん
コメントありがとうございます。
座屈応力の材料比較の考察において、一部不適切な文章がございましたので訂正いたしました。
鹿渡愼一郎さんのご指摘通り、座屈応力とはその数値を超える応力が材料に発生すると、座屈が発生してしまう破壊応力のことです。よって座屈応力は大きければ大きいほど、座屈に対して強い材料であることが言えます。