この記事ではコンクリートの化学的侵食についてと、その原因やメカニズムについて解説をしています。
コンクリートはその強度を保つためにアルカリ性に保たれているべきですが、思いも寄らない現象によってアルカリ環境が失われ、それによってコンクリートが劣化してしまうことがあります。この記事ではその原因とされているものをいくつか紹介しながら、その化学的侵食のメカニズムや原因物質についてまとめています。
目次
コンクリートに起きる化学的侵食について
まずはじめにコンクリートに起きる化学的侵食の概要について紹介します。
コンクリートに起きる化学的侵食というのは、コンクリートが外部からの化学的作用を受けて劣化してしまうことを指します。例えばコンクリートの硬化しているセメントを構成する水和生成物が変質してしまったり分解してしまうことで発生します。
コンクリートの内部は強アルカリ環境に保たれている必要がありますが、酸性物質がコンクリートのアルカリに作用することで化学的侵食が起こり、コンクリートの表面から劣化が生じていくことなどがあります。
このような化学的侵食は通常の空気にさらされたコンクリートでも発生しますが、下水道・工業施設や温泉施設、海洋中の構造物や硫酸塩を含む土壌などの特質な箇所での発生が多く見受けられています。この化学的侵食は硫酸濃度が高い場所ほど多く発生し、その侵食も大きいとされています。特に水セメント比の低いコンクリートは、硫酸による劣化が大きいとされています。
次はコンクリートへの化学的侵食の発生メカニズムについて解説をします。
コンクリートの化学的侵食のメカニズムについて
コンクリートの化学的侵食は下の6段階に分けることができます。
- 潜伏期前期
- 潜伏期後期
- 進展期
- 加速期前期
- 加速期後期
- 劣化期
それぞれを紹介に書いていきましょう。
コンクリート化学的侵食メカニズム:潜伏期前期・後期
化学的侵食の潜伏期の前期では、コンクリートへの変化はほとんど見られません。潜伏期の後期になると徐々にコンクリートの保護層(コンクリート表面)に変化が見られるようになります。徐々に変化していってしまうため、その外観上のデザインが低下してしまいます。
コンクリート化学的侵食メカニズム:伸展期
ここでは外観上だけでなく、コンクリートそのものにも変化が現れ始めます。この段階でコンクリートの大荷力などの耐久性に影響が及び始めます。しかしこの段階ではまだコンクリート内部にある鋼材などにまで変化は達していません。
コンクリート化学的侵食メカニズム:加速期前期・後期
コンクリートの化学的侵食加速度前期になると、コンクリートの断面の欠損が激しいものとなってきます。またコンクリート内部にある鋼材への侵食もはじまり、鋼材の腐食も始まります。
加速度後期では、コンクリートの断面欠損が著しくなり、内部の鋼材の腐食量も増大します。また、耐荷力はさらに低下してしまい、コンクリートの靭性も低下してしまいます。
コンクリート化学的侵食メカニズム:劣化期
この段階ではコンクリートの劣化がわかりやすいかたちで発生し、鋼材の腐食が激しいものとなり、変位やたわみも大きくなっていきます。構造物として非常に危険な状態です。
コンクリートの化学的侵食の原因物質
次にコンクリートの化学的侵食の原因となる物質についてまとめていきます。
コンクリートの化学的侵食の原因となるものにはいくつかあります。代表的なものとしては、
- 酸
- 動植物油
- 無機塩類
- 浮力性ガス
- 炭酸ガス
などがあります。これらはコンクリート中のセメント水和物と化学反応を起こし、水に溶けにくいセメント水和物を水に溶ける物質へと変化させてしまうとされています。この作用によってコンクリート組織が多孔質化したり分解してしまい、劣化につながります。
また、「下水道コンクリートでは微生物の作用によって化学的侵食が発生している」との指摘があります。これは下水道の下水部分に嫌気的環境下で有機物を分解し、その際に硫酸塩を還元する微生物が生息をしており、これによってコンクリートの化学的侵食でコンクリートが劣化してしまうというものです。
この下水道コンクリートの劣化を防ぐためには、硫酸と反応する水酸化カルシウムの量をできるだけ少なくすることとされています。そのためにはセメント量を少なくすることや、フライアッシュや航路すらぐ微粒末を多く使用するなどの方法が挙げられています。
硫酸への耐性をもったコンクリートは、今その開発が進めれており、実用化が急がれています。
まとめ
この記事では、コンクリートの発生する化学的侵食についてまとめました。コンクリートに起こる化学的侵食はどんなものなのか、その侵食メカニズムについてと化学的侵食を起こすとされている原因物質についてでした。
なかなか化学的分野の多い専門的な知識が多かったのですが、いろんな用途があるコンクリートの劣化現象について知っておくことは重要なことです。この記事で理解が深まっていただけたら幸いです。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。