この記事ではコンクリートのセメントが結合し硬化するメカニズムについて解説をします。
コンクリートは骨材にセメントと水からできるセメントペーストを混ぜてできるものです。このセメントペーストと骨材が結合しコンクリートが効果する仕組みについて詳しく解説しましょう。
コンクリートの構成材料については下の記事でまとめていますので、そちらをご覧になってからこの記事を読んでいただくと一層理解が深まると思います。
それでは本題に入っていきましょう。
セメントの原料について
鉄筋コンクリートなどに使用されるコンクリートは、上の図のような構成となっています。右からセメントと水を混ぜてセメントペーストを作り、セメントペーストと砂(細骨材)を混ぜてモルタルを作り、モルタルと砂利(粗骨材)を混ぜてコンクリートとなります。
この最右にあるセメントは、石灰石と粘土、珪酸原料、酸化鉄原料、石膏を主な材料としています。これらの材料を約1,500[℃]で焼成します。そのあと、急速に冷やします。セメントの原料は熱を加えると、水を混ぜると固まる性質に変化します。これできた物質をクリンカと呼びます。クリンカはセメントと原料の中間にある物質と考えると良いでしょう。
クリンカに石膏を加えたのちに細かく粉砕することで、コンクリートの構成材料であるセメントが出来上がります。
セメント原料の特徴として、全て日本国内で調達をすることができるという点があります。よって原料の運搬が簡単であり、大量生産が可能で安価です。セメントを作るのに必要な原料の割合は下のグラフになります。
セメント1[t]作るためには、石灰石が約1,200[kg]、粘土が240[kg]、珪石が40[kg]、鉄原料が30[kg]、石膏が30[kg]ほど必要になります。このグラフからセメントはおおよそ75[%]以上が石灰石でできていることがわかります。
セメントの水和反応と結合(硬化)のメカニズム
次にセメントの水和反応について詳しく解説をします。
セメントは水と接触をした時から水和が始まります。水和が始まってから徐々に硬化をしていきます。水とセメントが反応し、それによって微細粒子が析出されることでセメント粒子どうしの隙間を埋めていきます。さらに面積が増加、硬化、増加、硬化を繰り返すことで強度が出てきます。
セメントはカルシウムやケイ素、アルミニウム、鉄などの原子を含んでいます。よって水を接するとカルシウムのイオンが溶け出します。
水と反応して析出した微細な水和生成物は、水素結合あるいはファンデルワールス結合によって結合力と凝集力を帯びると言われています。
ファンデルワールス結合とは
ファンデルワールス結合とは、すべての物質の分子間に働く引力をファンデルワールス力と言い、それによって凝集・結合することを指します。いかなる分子でも低い温度になると分子の運動エネルギーが少なくなることで、分子どうしになんらかの凝集する力が生じていると考えられています。
生成された水和者は微粒子ですので、光が当たった時の乱反射が多いため白っぽく見えます。新しいコンクリートが硬化後と比べて白っぽく見えるのはこのためです。
一般的にセメントは水と反応してコンクリートとして役割を果たすまでにいくつか過程があります。水和反応が始まり固くなって形が変えられなくなるまでの段階は”凝結”、それ以上に固まることを”硬化”と言います。そしてどれくらい硬いかの程度を”強度”と言います。セメントは水と反応を始めてからおおよそ1ヶ月ほどで強度は実際に使用される際の80[%]程度に達します。
セメントの水和反応と発熱の関係について
セメントが水と反応すると水和物が生成されます。さらに化学反応による反応熱である水和熱が発生します。この事実により、セメントの水和反応は、発熱反応であるということができます。この発生する熱は、セメントの成分や水の量によっても異なります。よってコンクリートは水が乾くから固まるのではなく、水とセメントが反応して固まるということです。下線部分はぜひ覚えておきましょう。
セメントはアルカリ性を示す
セメントは水と接することで水酸化カルシウムを生じ、アルカリ性を示します。
アルカリ性の物質であるため、セメントが目や鼻、皮膚に対して長時間付着した状態が続くと、角膜や鼻の粘膜、皮膚に炎症を起こす可能性があります。そのため、セメントを扱うときは手袋や長靴、保護メガネや防護マスクなどの着用、換気をする必要があります。
セメントが硬化した後は、水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して中性の炭酸カルシウムとなっているため、触れても問題はありません。
しかしコンクリート内部はアルカリ性を保つことでその強度を保ちます。酸化してしまうと、鉄筋コンクリートなどでは鉄筋が錆びてしまい、劣化につながってしまいます。鉄筋コンクリートの強度を保つ方法にかぶりコンクリートという概念があります。かぶりコンクリートはコンクリートの劣化を妨げるために使用するのものですが、これとアルカリ性の関係については、下の記事をご覧ください。
かぶりコンクリートの役割とは?鉄筋コンクリートの耐久性と寿命について
まとめ
この記事ではコンクリートの原料ともなるセメントについて詳細に説明をしました。セメントの知識はコンクリートを深く知る上で欠かせません。何度か読み直しつつ、少しずつ覚えていってください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
セメントの原料についての項について、粗骨材と細骨材が逆ですね
通りすがりさん
コメントありがとうございます。
間違いが確認されましたので、表記を修正しました。
わざわざご指摘ありがとうございます。
「セメントはアルカリ性を示す」
の段落で
「セメントが硬化した後は、水酸化カルシウムが空気中の炭酸ガスと反応して中世の炭酸カルシウムとなっているため、触れても問題はありません。」
との記述ありますが、
炭酸ガスと反応して”中性”の炭酸カルシウムになって....
の誤字ではないですか?
通りすがりNo2 さん
建築学科のための材料力学です。
コメントありがとうございました。
確認したところ、誤字がありましたので修正しました。
これからも建築学科の材料力学をよろしくお願いいたします。