この記事ではポルトランドセメントについて掘り下げて解説をします。

セメントを大きく分類すると、「ポルトランドセメント」「混合セメント」「エコセメント」や、「特殊セメント」などがあります。一般に「セメント」というときは「ポルトランドセメント」のことを指します。セメント自体の特徴やセメントの結合(硬化)する原理については下の記事にまとめてありますので、そちらをご覧ください。

コンクリートセメントの結合(硬化)の原理と水和反応について

ここではセメントの中でも、ポルトランドセメントに絞って、その成分や種類について紹介します。

 

ポルトランドセメントの原料・成分について

ポルトランドセメントもセメントの一種です。成分は他のセメントと同じように石灰石、粘土、珪石や鉄原料を主原料としています。これらの原料で高温で焼成し、エーライト、ビーライトなどの中間製品を作ります。

エーライト、ビーライトとは?

エーライト、ビーライトとは、それぞれクリンカ構成化合物の一種です。セメントに含まれる主要な化合物たちです。

エーライトとビーライトはその成分に違いがあります。エーライトは珪酸三カルシウムとほぼ同じ化学成分であるのに対し、ビーライトは珪酸二カルシウムとほぼ等しい化学組成から成っています。

エーライトの特徴は、水和反応速度が大きいことにあります。水和熱はそこまで発生しませんが、水和反応速度が大きいため水和を始めてから短期で強度を実現することができます。

ビーライトの特徴はエーライトとは対称的であり、水和反応速度が小さいことです。水和反応時に発生する熱は、エーライトと比べて小さいです。そして、水和反応速度が小さいことから、水和し始めてから長期にわたって水和を続けるため、最終的な強度に寄与すると言われています。




 

ポルトランドセメントの種類について

次にポルトランドセメントの種類について書いていきましょう。ポルトランドセメントの種類は、その機能によって分けられます。ポルトランドセメントの種類と特徴についてまとめると、下の表のようになります。

ポルトランドセメントの種類 特徴・使い方
普通 これはポルトランドセメントの中でも一般的なものであり、最も凡庸性の高いものです。土木・建築の建設用としては最も使用されています。国内で使用されているセメントのおおよそ70[%]ほどを占めています。
超早強 ポルトランドセメントの中で最も早く強度を発揮するものです。緊急の補修用コンクリートなどにこちらが使用されます。
早強 セメントの粒子が細かいため、短期間に高い強度を発揮できるものです。緊急工事であったり寒冷期の工事の際に使われます。
低熱 ビーライトの含有率が40[%]以上と規定されたものです。水和熱が低いことから、コンクリートの低熱性や高強度性などに対応し、の長期間強度を発揮します。
中庸熱 水和熱を抑えるためにエーライトなどの含有率を低くしたポルトランドセメントです。これによって長期の強度に優れており、乾燥収縮が小さいという特徴があります。
対硫酸塩 ポルトランドセメント内の硫酸塩への対抗性が弱い成分を極力少なくしたものです。その結果対硫酸塩性が得られ、海水中や温泉地の近くの土壌、下水や工場排水中などの硫酸塩を含む場所で使用されることが多いです。

ポルトランドセメントの種類は大きく分けて上の6つとなりますが、これらのそれぞれに低アルカリ形というものがありますので、合計で12種類となります。この低アルカリ形というものは日本工業規格であるJISによって定められています。

低アルカリ形とは?

ポルトランドセメントにおいてセメント中の全アルカリの量を0.6[%]以下のものを低アルカリ形ポルトランドセメントと言います。JISによって1986年に規定されました。アルカリ骨材反応に関しましては、下の記事内にまとめてありますので、気になる方はそちらをご覧ください。

鉄筋コンクリートの特徴(長所と短所とその対策)について

低アルカリ形とは一時期社会問題となったアルカリ骨材反応への対策として規定されたものでしたが、現在ではほとんどが生産されていません。

 

 

まとめ

この記事ではセメントの中でもポルトランドセメントに絞って詳しく解説をしました。ポルトランドセメントはコンクリートの原料であるセメントの中でも最も一般的であるセメントですので、その理解は非常に重要です。何度か読み返して理解を深めてくださいね。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。