今回は伝道軸に関しての基礎を紹介していく記事になります。
回転することで動力を伝達する軸を伝道軸と呼びます。
軸のねじりモーメントと仕事や、動力の関係について考えていきましょう。
それでは早速内容に入っていきます。
目次
仕事・動力・トルク
物体が力F[N]を受けて時間t[s]で力の向きに距離l[m]移動したとしましょう。
この時、F×lを仕事W(単位[J])と呼びました。
また、この仕事を仕事のかかった時間t[s]で割った値を仕事率P(単位[W])あるいは動力と呼びます。
ここまでは高校物理の範囲なので、わかる人が多いでしょう。
機械のエンジンやモーターなど、回転軸のねじりモーメントを一般にトルクと呼びます。
トルクに関しては以前まとめた記事がありますので、こちらを参照してください。
機械分野では実務的に、1分間あたりの回転数をNで表します。
回転軸の仕事率(動力)・トルク・回転数を関連させた式を考えます。
それでは仕事と仕事率、トルクの式を実際に見ていきましょう。
W = F × l
(W:仕事[J]、F:力[N]、l:移動した距離[m])
P = W / t
(P:仕事率[W]、W:仕事、t:時間[s])
これは高校物理の力学の分野ですでに勉強しているはずなので、復習として紹介しました。
さて、次に大学の物理で初めて登場する”トルク”に関しての式を見ていきましょう。
原点Oに対するトルク=力×半径で求めることができるので、
T = F × r(T:トルク[N・mm]、F:力[N]、r:半径[mm])
となります。
ここで、半径rの円が1分間にN回転して得る距離lは、円周×N(=2πrN)と等しくなりますので、1分間あたりの軸のする仕事は、以下のように表すことができます。
W = F × l = F × 2πrN × 10^(-3) = 2πTN × 10^(-3)
(W:仕事[J]、F:力[N]、l:距離[m]、T:トルク[N・m]、N:回転数)
ここで、10^(-3)は、単位を[mm]から[m]に変換するために掛けています。
軸の仕事率(動力)、1分=60秒の換算(1/60倍)で計算していきます。
P = W / t = {2πTN×10^(-3)} / 60 = 2πTN / 60×10^(-3)
(P:仕事率、t:時間)
この式から分かるように、仕事率(動力)Pは、トルクTと回転数Nの積に比例します。
仕事・仕事率・トルクの例題を紹介
ではここまで紹介した仕事や仕事率、トルクに関しての概念を、実際に計算をして確認していきましょう。
例題1:トルクを求める問題
300[rpm]で5[kW]の動力(仕事率)を伝達している軸に生じるトルクを求めなさい。
解答例
解答を見ていく前に、単位の[rpm]に関して少し触れておきましょう。
rpmとはrevolution per minuteの略であり、回転数のことを表します。
回転数はただの”数”なので、一般的には単位はありません。
しかし回転数であることをわかりやすくするために、[rpm]として表しました。
それでは解答を見ていきましょう。
上の式で紹介した通り、動力(仕事率)P=2πTN / 60×10^(-3)でした。
この式を使って答えであるトルクを求めていきます。
T = P×60×10³/2πN = 5×10³×60×10³/(2π×300) = 1.59×10⁵[N・mm]
答え
トルク:1.59×10⁵[N・mm]
例題2:動力(仕事率)を求める問題
500[rpm]で回転する直径40[mm]の軸の許容ねじり応力を50[MPa]とする。
伝達できる最大動力(仕事率)を求めなさい。
解答例
では解答例を見ていきます。
トルクの式は以下の公式から導くことができます。
Zp = T / τ
(Zp:極断面係数、T:ねじりモーメント、τ:ねじり応力)
この式から、
T = τZpを導出することができます。
また、中軸円形軸(空洞のない円形軸)の極断面係数は以下の式で求めることができます。
極断面係数Zp = π/16 × d³
これらを組み合わせて式を作り、答えを求めていきましょう。
T = τZp、Zp = π/16 × d³より
T = τ × π/16 × d³
次にトルクと回転数から動力(仕事率)を求めます。
動力(仕事率)P = 2πTN / 60×10^(-3) = 2πN / 60×10^(-3) × (τ×π/16×d³)
= (2π × 500× 50 × 40³) / (60×10³ × 16)
= 32.9 × 10³[W]
答え
動力(仕事率):32.9 × 10³[W]
まとめ
今回は仕事や仕事率(動力)、トルクについてまとめました。
仕事や仕事率については高校物理でも出てきたものですが、トルクは大学で初めて登場する概念でした。
また、材料力学では仕事率のことを動力と呼ぶこともありますので、これも合わせて覚えておきましょう。
今回の記事は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。