材料力学にかかわらず、建築物の材料を安全に使用するには、材料に発生する応力が、材料に耐えることのできる応力よりも小さいことが必要になります。
材料を計算の下安全に使用していくには、今回紹介する安全率の概念が非常に重要です。
今回の記事もとても重要な内容を含んでいますので、しっかりと理解するようにしてください。
材料力学の安全率とは?考え方を紹介!
材料に発生する応力を使用応力と呼びます。
また、材料の安全を保証できる最大限使用応力のことを、許容応力と言います。
許容応力を決める基準となる応力を、基準応力と呼び、これは材料や使用方法から決定されるものです。
まずはこの3つの応力の概念を覚えた上で、安全な構造物を作っていくためには下の関係が成り立っていなければなりません。
使用応力 < 許容応力 < 基準応力
基準応力を超えては安全に使用することができないので、上の関係が成り立った上で材料は用いられなければなりません。
基準応力は材料によって、また材料の使用用途によって決まる数値であると上で説明しましたね。
基準応力の決め方の例を少しばかり表で紹介しましょう。
材料や荷重の条件 | 基準応力 |
軟鋼・アルミニウムなどの塑性材料 | 降伏点・耐力 |
鋳鉄など脆い材料 | 極限強さ(引張強さ) |
このように基準応力は、応力ひずみ限度のグラフから得られる降伏点や極限強さ、また高温な場合はクリープ限度、繰り返し荷重の場合は疲労限度など、材料と受ける荷重の種類によって異なります。
鉄鋼の応力ひずみ線図は以下のようなものでしたね。
この図では、A点が『上降伏点』、B点が『下降伏点』C点が『極限強さ』でした。
A点・B点のような降伏点付近では、ひずみが増加しても応力は上がったり下がったりします。
荷重の大きさがそこまで大きくなく、それによってひずみがA点・B点付近のような大きさになる場合は、鉄鋼の基準応力は降伏点の数値になります。
鋳鉄など脆い材料では、荷重の値がそこまで大きくない場合にもひずみが大きくなりやすいので、そのような材料では応力ひずみ線図のC点のような『極限強さ』の値が許容応力になります。
応力ひずみ線図の詳しいことは以下の記事に詳しく解説してありますので、以下を参照してくださいね。
次に材料にかかる荷重によって変わる基準応力の例を紹介します。
材料や荷重の条件 | 基準応力 |
高温で使用する材料 | クリープ限度 |
繰り返し荷重を受ける材料 | 疲労限度 |
次に高温で使用する材料の基準応力となる『クリープ限度』ついてです。
クリープとは、材料に長時間荷重が作用し続けることによって、材料の変形量が増えていく現象のことを指します。
そこクリープ現象ですが、高温な環境に置かれた材料はクリープ現象を起こしやすくなります。
そのため、高温下で使われる材料の基準応力は、クリープ現象が起きて一定の時間が経過した後に変形する応力であるクリープ限度の値になります。
最後に繰り返し荷重を受ける材料の基準応力の決め方についてです。
繰り返し荷重とは、繰り返し繰り返し作用するある量の荷重のことでした。
通常では問題にならないような小さな荷重であっても、長時間繰り返し作用することによってとある時に破壊を起こしてしまう可能性があります。
このような繰り返し荷重が発生する材料では、長時間繰り返し作用しても破壊に至らない疲労限度の値が基準応力になります。
安全率とは?概念を紹介!
さてここからは本題である安全率の紹介になります。
上で紹介した材料とその用途できます基準応力をσs、材料が保証できる最大の応力である許容応力σaとし、それらの比を表したものが安全率です。
安全率の比の公式は以下のようになります。
σa = σs / S
(σa:許容応力、σs:基準応力、S:安全率)
安全率が大きいほど材料は材料に荷重に対して余裕をもっていることになります。
しかし安全率が大きすぎては、材料の重量が割合としても増してしまうので、適切とは言えません。
安全率Sの例を、いくつかの材料ごとに表で紹介しましょう。
材料 | 静荷重 | 繰り返し荷重 | 交番荷重 | 衝撃荷重 |
鋼 | 3 | 5 | 8 | 12 |
鋳鉄 | 4 | 6 | 10 | 15 |
木材 | 7 | 10 | 15 | 20 |
まとめ
今回は安全率について紹介しました。
安全率とは材料や材料の用途、使われる環境によって異なるものであると説明しましたね。
例えば繰り返し荷重を受ける材料であれば、疲労限度が安全率を決める基準応力を決定しました。
高温下で用いられる材料であれば、クリープ限度が基準応力を決める要因となりましたね。
このように材料の使われ方によってき順応力が異なり、それによって安全率も異なることを覚えておいてください。
今回の記事は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。