この記事ではRC(鉄筋コンクリート)建物の耐力と靭性について紹介していきます。耐力と人生の違いについても書いていきます。
建物はその構造によって、地震などの災害への対処が異なります。どのような構造にどのような特徴があるのかを確認していきましょう。
それでは内容に入っていきます。
RC建物の耐力(強さ)と靭性(粘り)
ではRC(鉄筋コンクリート)建物の耐力と靭性の関係について見ていきます。下の図をご覧ください。
こちらは『荷重-変位曲線』です。
- 1:壁の多い建物
- 3:純ラーメンの建物
- 2:1と3の間の建物
となります。赤い曲線に関しては後ほど紹介します。
さて、それぞれの特徴に関して紹介して行きます。
壁の多い建物の耐力と靭性
上のグラフから分かる通り、壁の多い建物は耐力が強く、靭性が弱いのが特徴です。
耐力と靭性の違いは?
ここで耐力と靭性の違いについて確認しましょう。耐力とは水平力に対してどれだけ耐力を持っているかということになります。耐力が高いと大きな水平力がかかった場合も、崩壊しません。変形しにくくなり壊れにくくなります。それに対して靭性とは、粘り強さの性質のことです。靭性が大きいと粘り強くなりますので、変形はしますが元に戻ります。
地震が起こった場合で耐力と靭性の違いを考えてみます。耐力がある建物は、地震が起こった時も変形しにくいので地面と一緒に建物も動きます。対して人生がある建物は地震が起こった場合は地上床部分と天井は別々に動き、こんにゃくのようなイメージで変形します。変形はしますが、地震が終わると元どおりの形に戻ります。
耐力と靭性は、どちらかが大きければ地震に対して丈夫な構造物なので、耐力があって靭性が無い構造物、あるいは耐性が無くて人生がある構造物でも問題ありません。
純ラーメンの建物
次に純ラーメンの建物の耐力(強さ)と靭性(粘り強さ)について確認します。
純ラーメンは上の図の3の曲線を特徴に持ちます。水平力には弱いですが、水平変位には非常に強くなるのが特徴です。靭性を持っているのが純ラーメンです。
では、耐性がないから構造としては強いのかどうかということについて説明します。構造的な強さは、耐力と靭性の総和で考えます。上のグラフでいうと、曲線とx軸が作り出す面積がその構造としての強さを表します。よって上の図の1と2と3は構造的な強さはどれも同じです。
耐性に優れた構造物にするか、人生に優れた構造物にするかは設計者の判断となります。
曲線2と赤い曲線について
曲線2は1と3の間の構造物です。
耐性と靭性それぞれに対応した構造物と考えることができます。耐性と靭性のどちらかに特化しているわけではありませんが、どちらもそこそこ兼ね備えているので、構造的な強さは1と3と変わりません。
では赤い曲線はどうでしょうか。赤い曲線は耐力に優れているとも靭性に優れているとも言えず、総合的な強さも2に及んでいません。このような曲線の特徴を持つ建物は、耐力・靭性ともに不足しており、地震などに対して安全な構造物とは言えません。
赤い曲線のような特徴を持つ構造物には下のようなものがあります。
このような構造物は耐性があるとも靭性があるとも言えません。地震が発生すると、赤丸内の部分に亀裂が発生し、この部分が崩壊してしまいます。極短柱(H/D≦2)はせん断力への耐力が小さく、脆弱破壊を招く原因になります。しかし設計の過程でこのような構造にしたい時があります。
よってこのような脆弱性への対策としては、X型配筋を施したり、構造スリットを使ったり帯筋を増やしたりすることが挙げられます。鉄筋の配筋については以前の記事でまとめていますので、きになる方はそちらをご覧ください。
まとめ
今回はRC建物の耐力と靭性についてまとめました。耐力は水平力への強さ、靭性は水平変位への強さでした。
壁の多い建物は耐力が大きく靭性が小さい、純ラーメン構造物は耐力が小さく靭性が大きいのでした。そして構造的な強さは耐力と靭性の合計で考えるのでした。何度かこの記事で紹介した図を確認しながら理解を深めていってくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。