この記事では鉄筋コンクリートの鉄筋比と等価断面比についてまとめます。
単刀直入にいうと、鉄筋コンクリートの鉄筋比とはAs(鉄筋の断面積)/Ac(コンクリートの断面積)です。また等価断面比とは、鉄筋も含めたて想定したしたときの断面積のことです。しかしこれだけでは鉄筋比や等価断面比の概念の理解がしにくいと思いますので、鉄筋コンクリート鉄筋比はどのようなときに使われるか、また鉄筋コンクリートの等価断面比についても紹介していきます。
それでは早速内容に入っていきましょう。
鉄筋コンクリートのヤング係数比と等価断面比
まずはじめに鉄筋コンクリートの鉄筋比はどのような導出がされるかを見ていきます。鉄筋コンクリートの力学の基本的概念を見ていきましょう。少し導出までが長いですが、内容は簡単なので読み込んでください。
例として下の図を見てください。
こちらは中心軸圧縮荷重を受けるRC(鉄筋コンクリート)柱です。この柱の応力を計算します。鉄筋とコンクリートの応力ひずみ線図を確認してみましょう。
こちらが鉄筋とコンクリートのひずみ応力線図です。
応力ひずみ線図とは?
ここで応力ひずみ線図について復習をしましょう。ひずみ応力線図とは、ひずみと応力の関係をグラフ化したものです。
素材によってひずみに対する応力が異なるため、それの視覚化や比較などに応力ひずみ線図は適しています。材料力学の試験などでは、鉄鋼の応力ひずみ線図が出題されることが多いです。こちらは覚えておきましょう。
ひずみ度εはΔl/lで算出されます。鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートが同じ断面内に存在しますので、平面保持の仮定より鉄筋とコンクリートのひずみ度は同じなります。しかし上の応力ひずみ線図から分かるように、同じひずみ度でも発生する応力度の値はσs, σcと異なります。同一仮想断面内での鉄筋の断面積をAs、コンクリートの断面積Acとすると、以下の式が成り立ちます。
N = σs×As + σc×Ac
さて、荷重Nとの等式が計算できましたので、次にこの等式を変形していきます。
鉄筋のヤング係数をEs、コンクリートのヤング係数をEcとすると、
σc = Ec × ε → ε = σc / Ec …(1)
σs = Es × ε …(2)
(1)を(2)に代入すると、
σs = Es/Ec × σc …(3)
Es/Ecをヤング係数比と呼び、nで表します。よって、このnを(3)に適用すると、
σs = n × σc …(4)
となります。これを最初の荷重Nとの等式に代入すると、
N = σs×As + σc×Ac = (n × σc)×As + σc×Ac
= σc × (nAs + Ac)
この(nAs + Ac)の部分を等価断面比と呼びます。今回の等価断面比は同一仮想断面内にある鉄筋とコンクリートにおいて、鉄筋とコンクリートのヤング係数比を用いて鉄筋も全てコンクリートと想定したときの断面積のことをさします。簡単に言うと、鉄筋とコンクリートを分けて計算するのには手間がかかるので、鉄筋もコンクリートの一部として考えたものが等価断面比です。
鉄筋コンクリートの鉄筋比の公式
さて、本題の鉄筋比を考えます。ここまでくれば鉄筋比は簡単です。
p = As / Ac
(p:鉄筋比、As:鉄筋の断面積、Ac:コンクリートの断面積)
この式から分かる通り、鉄筋比とは鉄筋コンクリートにおける鉄筋とコンクリートの断面積の比です。鉄筋比を先ほど導出した式に代入すると、
N = σc × (nAs × Ac) = σcAc × (np + 1)
となります。これは、鉄筋コンクリートのヤング係数比と鉄筋比(鉄筋とコンクリートの断面積の比)が分かっていれば、荷重はコンクリートの応力と断面積を使って計算することができるということです。鉄筋コンクリートの計算を鉄筋とコンクリートに分けて考えるのは面倒ですから、ヤング係数比と鉄筋比で全てをコンクリートとして扱い、簡単に計算をすることができます。
この式から、コンクリートと鉄筋に作用する応力は以下のように算出することができます。
コンクリートに作用する応力σc = N / Ac(np + 1)
鉄筋に作用する応力σs = Nσc
鉄筋とコンクリートのヤング係数について
鉄筋とコンクリートのヤング係数は一定の値です。
鉄筋のヤング係数Es = 205,000[N/mm²]
コンクリートのヤング係数Ec = 21,000[N/mm²]
よって、鉄筋とコンクリートのヤング係数比n(=Es/Ec)は実務上15として計算します。鉄筋とコンクリートのヤング係数は計算でよく使用する値なので、覚えておくことをお勧めします。ヤング係数比も15と覚えてしまって良いでしょう。
まとめ
今回は鉄筋コンクリートの鉄筋比・ヤング係数比・等価断面比について解説しました。今回の記事は鉄筋コンクリートの応力計算をするときなどに非常に重要な指標をいくつか紹介しました。何度か読み返して、完璧に理解してくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。