この記事では、梁に発生する曲げ応力の許容値を設定して、最大曲げモーメントと断面係数から梁の断面寸法から梁の断面寸法を求める演習問題を扱っていきます。
断面寸法がわかっていて断面係数を求める問題がよく出題されますが、今回は逆のアプローチをして最大曲げモーメントと断面係数から断面寸法を求める問題です。
この手の問題も非常によく出題されますから、ぜひマスターをして材料力学の理解を深めていきましょう。
今回の問題では図を用いながら解説をしていきます。
そのため実際に手で図を書きながら問題を解いていってくださいね。
それでは問題を見ていきましょう。
目次
演習問題:片持ち梁の断面寸法
次の荷重を受ける片持ち梁の許容曲げ応力を60[MPa]とする。
幅の2倍の高さを持つ長方形断面の寸法を求めなさい。
解答例
それでは解答例を紹介していきます。
問題を解く流れとしては、以下のようになります。
- 支点反力を求める
- せん断力反力を求める
- 曲げモーメントを求める
- 最大曲げモーメントM、断面係数Z、曲げ応力σから断面寸法の幅bを求める
最大曲げモーメントは断面寸法に関係なく求めることができるので、最初に最大曲げモーメントを求めていきましょう。
支点半力を求める
片持ち梁の支点反力は下の図のように発生します。
両端支持梁の場合支点反力は2つ働きますが、片持ち梁の場合支点反力は1つだけです。
今回はB点に支点反力RBが働くということになります。
この支点反力RBを求めていきましょう。
RB = 500 + 2×600 = 1,700[N]
せん断力を求める
支点反力が求まりましたの、図に数値を書き入れると下のようになります。
次に片持ち梁内部に働くせん断力を求めていきましょう。
AC間のせん断力
梁のAC間には、任意断面の左側が集中荷重だけになるため、せん断力FAC = -500[N]
CB間のせん断力
集中荷重500[N]に自由端からの距離とxとして分布荷重を加えると、400≦x≦1,000の一般式が以下のようになります。
FCB = FAC – ω(x – 400)
= -500 – 2(x – 400)
= -2x + 300[N]
任意の点に関するせん断力が求まったので、それをせん断力図にして図に追加していきましょう。
曲げモーメントを求める
次に曲げモーメントです。
曲げモーメントもせん断力と同様、AC間とCB間に分けてそれぞれを求めていきます。
AC間の曲げモーメント
まずはAC間の曲げモーメントです。
任意の断面から集中荷重までの距離をxとして、AC間の曲げモーメントは以下のようになります。
MAC = -500x[N・mm]
CB間の曲げモーメント
次にCB間の曲げモーメントです。
任意の断面から自由端(A点)までの距離x間の全モーメントを加えて考えます。
400≦x≦1,000の曲げモーメント一般式は下のようになります。
MCB = -500x – W/2 × (x-400)² = -500x – (x-400)²
Wはωの2[N/mm]の2の数字が代入されて上の式のようになります。
曲げモーメントの一般式が求まりましたので、曲げモーメント図をずに書き加えると下のようになります。
固定端に発生する曲げモーメント
最後に曲げモーメントの最大値を求めましょう。
上の図からもわかる通り、曲げモーメントは今回の肩持ち梁では固定端(B点)で最大となります。
よってB点での曲げモーメントMBを求めます。
B点はA点からx=1,000のところにありますので、一般式にx=1,000を代入して求めます。
MB = -500×1,000 -(1,000-400)² = 8.6×10⁵[N・mm]
こちらが今回の問題の最大曲げモーメントです。
最大曲げモーメントM、断面係数Zから曲げ応力σから幅bを求める
曲げ応力と長方形断面の公式は以下のようなものでした。
σ = M/Z
(σ:曲げ応力、M:最大曲げモーメント、Z:断面係数)
Z = bh²/6
(σ:曲げ応力、M:最大曲げモーメント、Z:断面係数)
これらの公式を組み合わせて断面寸法を求めていきます。
Z = bh²/6 = b(2b)²/6 = 2b³/3
σ = M/Z = M/(2b³/3) = 3M/2b³
∴ b = ∛(3M/4σ)
M = MB =8.6×10⁵[N・mm]、σ = 許容曲げ応力 = 60[MPa]なので、
b = ∛{(3 × 8.6×10⁵)/(4 × 60)}
= 27.8[mm]
断面寸法の高さ2bは、幅bの2倍なので、
2b = 55.6[mm]
答え
断面寸法:27.8[mm]×55.6[mm]
まとめ
今回の演習問題では、肩持ち梁の荷重条件と許容値から断面寸法を求める問題を紹介しました。
最大曲げモーメントと断面係数を断面寸法から求めるのが一般的な演習問題ですが、今回のような逆のアプローチをとる問題も珍しくありません。
この問題が解けるようになると、曲げモーメント・断面係数・断面寸法についての理解が深まります。
ぜひ復習して、今後の勉強に役立てていってくださいね。
今回の記事は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。