この記事では、座屈計算の練習問題を紹介していきます。座屈計算は難しいというイメージがあるかもしれませんが、しっかりと手順通りにやっていけば難しいものではありません。座屈計算の手順に関しては以前わかりやすくまとめた記事がありますので、そちらを参照していください。

式の座屈計算(オイラーの式・ランキンの式)手順まとめ

では早速演習問題を見ていきましょう。

 

演習問題:柱の最大許容荷重を求める問題

長さ1[m]、断面寸法80[mm]×38[mm]の軟鋼製で、両端の回転支持した柱がある。この柱に加えることができる最大許容荷重を求めなさい。なお、縦弾性係数(ヤング率)は206[GPa]、安全率は4とします。

 

解答例

では解答例を見ていきましょう。最初に細長比からしようする計算式(オイラーの式orランキンの式)を決定します。その後に座屈荷重を計算して、安全率から最大許容荷重を求めます。

最初に細長比λを求めるための、断面二次半径kを計算していきます。断面二次半径kは、断面二次モーメントを断面積で割った値の平方根を取ったものです。

断面積A = bh、長方形断面の断面二次モーメントI=bh³/12なので、

断面二次半径k = √(I/A) = √(bh³/12bh) = √(h²/12)

値は最後に代入して計算するので、ここでは文字のまま進めていきましょう。

 

次に細長比λを計算します。細長比は柱の長さを断面二次半径で割ったものです。よって、

細長比λ = l/k = l/√(h²/12) = 1,000/√(38²/12) = 91.2

 

細長比が求まったので、座屈荷重を計算する計算式を決定します。今回の演習問題の柱は軟鋼製ですので、λ<90√nを満たしていれば中間柱で計算式はランキンの式で計算します。そうでない場合(λ>90√n)の場合は、長柱でありオイラーの式で座屈計算します。

両端回転支持の柱の端末係数n=1ですので、この値を用いて選定しましょう。

90√n = 90√1 = 90、λ = 91.2

91.2≒90ですので、今回の問題はλ ≒ 90√nです。この場合はオイラーの式とランキンの式両方で座屈荷重を計算して、小さい方を座屈荷重として扱います。まず初めにオイラーの式を用いた座屈荷重を求めていきましょう。オイラーの式の座屈荷重の計算式は以下のようなものでした。

オイラーの式の座屈荷重の計算式

P = nπ² × EI/l²

(P:座屈荷重[N]、n:端末係数、E:縦弾性係数(ヤング率)[GPa]、I:最小断面二次モーメント[mm⁴]、l:柱の長さ[mm])

この公式に則って座屈荷重を計算します。オイラーの式を用いて計算した座屈荷重は、Poとして計算します。

座屈荷重Po = n × π²E/λ² × A = 1 × π² ×206×10³ × 80 × 38 / 91.2²

= 743×10³ = 743[kN]




 

オイラーの式を用いた座屈荷重計算が終わりましたので、次にランキンの式を用いた座屈荷重を計算します。ランキンの式は以下のようなものでした。

ランキン・ユゴニオの式の座屈荷重の計算式

P = σ0A / (1 + a/n × λ²)

(P:座屈荷重[N]、σ0:材料によって決まる応力[MPa]、A:断面積[mm²]、a:材料によって決まる実験的定数、n、端末係数、l:柱の長さ[mm]、k:最小断面二次半径[mm]、λ:細長比)

ランキンの式で計算した座屈荷重は、Prとして表していきます。上の式にあるa(材料によって決まる実験的定数)ですが、軟鋼製の場合は333の値を取ります。この値を代入して計算していきましょう。

座屈荷重Pr = σ0A / (1 + a/n × λ²) = 333 × 80 × 38 / (1 + 1/7,500 × 91.2²)

= 480×10³ = 480[kN]

 

よって、Po > Prとなりますので、座屈荷重はランキンの式で計算した480[kN]としましょう。

次に安全率を用いた最大許容荷重を求めます。安全率とその公式に関しては、以前まとめた記事がありますのでそちらを参照してください。

さて、今回柱が許容できる最大荷重は、安全率が4でしたので、

最大許容荷重 = 480/4 = 120[kN]となります。これを答えとしてまとめます。

 

答え

最大許容荷重:120[kN]




 

まとめ

今回は安全率と複合した座屈荷重の求め方に関する問題を紹介しました。座屈荷重の求め方については理解できたでしょうか。座屈計算は手順通りに解いていき、慣れるのが重要になります。何度も復習をしながら勉強していってくださいね。

また、この問題は安全率から許容荷重を求めましたが、安全率はいろいろな問題に絡めて出題されます。まだ「安全率ってなんだっけ…?」となる方は、ぜひこの記事から安全率についての概念を読んでみてください。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

材料力学
オススメ参考書
Buy Now