この記事では鉄筋コンクリートの短所についてまとめていきます。鉄筋コンクリートの長所についてはコチラの記事でまとめてありますので、そちらを参照してください。
鉄筋コンクリートの短所について理解することは非常に重要です。建築構造を学んで行く上で、建築に使う材料の知識を身につけることは必須ですが、その中でも鉄筋コンクリートはよく使われる構造材です。理解を深めて今後設計を学んで行く上で役立ててください。
それでは早速内容に入っていきます。
鉄筋コンクリートの短所とその対策について
鉄筋コンクリートの長所はたくさんありますが、もちろん短所も存在しています。代表的なものを挙げると以下の通りです。
- 比強度が小さい
- ひび割れが入りやすい
- 施工期間が長い
- 解体が困難
- セメント製造時のCO2排出量が多い
これらの鉄筋コンクリートを一つ一つ説明していきます。
比強度が小さい
まずはじめに挙げられる鉄筋コンクリートの短所は、比強度が小さいことです。比強度とは強度を比重で割った値のことです。比強度が大きいほど、その構造物は「軽くて丈夫である」ということができます。
鉄筋コンクリートの比強度が小さいことを確認するために、下の表を見てみましょう。
項目 | コンクリート | 鉄鋼 | 木材 |
単位体積重量[kN/m³] | 23~24 | 78.5 | 5~9 |
強度[N/mm²] | 18~60 | 235~500 | 50~120 |
比強度 | 1 | 4 | 10 |
この3つの素材の表を見てわかる通り、コンクリートは比強度が小さいです。鉄鋼の1/4、木材の1/10ほどの比強度しかありません。
コンクリートの比強度が小さいので、対策が必要です。その対策の代表例としては、高強度コンクリートを用いたり、軽量コンクリートを使うことです。コンクリートの強度はセメントの質によって大きく左右されますから、セメントをうまく工夫して作ることによって比強度の向上を図ることで、比強度を上げることが可能です。
ひび割れが入りやすい
次に挙げられるコンクリート(鉄筋コンクリート)の短所はひび割れが入りやすいことです。コンクリートにヒビが入ってるところを実際に見たことがある人も多いのではないでしょうか。
コンクリートは引張に対する強度が小さく、ひび割れが入ってしまう材料です。また、固定された梁や柱などのコンクリートが乾燥収縮することで引張力が発生しひび割れが発生します。
ひび割れの対策としては、プレストレスコンクリートを用いたり膨張コンクリート、ひび割れ補強筋を利用することです。プレストレスコンクリートとはあらかじめコンクリートに圧縮応力を作用させてコンクリートのひび割れを制御したりするものです。こちらはコンクリートが圧縮力に強いという性質を利用しています。
膨張コンクリートはあらかじめコンクリートに膨張剤を入れておき、コンクリートを固める時に膨張させ引張作用を軽減させるものです。ひび割れ補強筋はその名の通りひび割れが入るところに配筋するものです。
施工期間が長い
コンクリートは流して固めるというプロセスが必要なため、施工期間が高くなってしまうという短所もあります。施工期間が長いということは、その期間にかかる人件費が高くなってしまうことにつながります。
これの対策としては早強セメントの利用やプレキャスト化、プレハブ化などが挙げられます。
早強セメントとは硬化が早いことを特徴としているセメントです。これを使うことによってコンクリートが早く硬まります。プレキャスト、プレハブ化は、あらかじめ工場で固めておきたコンクリートを運送し、現地で固めるプロセスを省略する工法です。
解体が困難
コンクリートは硬いため、解体が困難です。解体方法には新しいものが提案されていますが、現時点はコンクリートの短所と言えるほど困難です。
新しい解体方法には、ダイヤモンドカッターやウォータージェットなどが挙げられます。また材料分離の研究をすることによって、今後のコンクリート解体が簡単で素早いものになるかも知れません。
セメント製造時のCO2排出量が多い
コンクリートはセメント製造時のCO2排出量が多いです。下の図で比較をしてみましょう。
木造 | RC造 | S造 | |
CO2排出量比率
(木造を1.0とする) |
1,0 | 2,5~3,5 | 1,5~2,5 |
コンクリートを使用すると木造の2倍以上のCO2を排出してしまいます。これは環境面に良くないため、対策をしてCO2排出を減らさなければなりません。
対策としては、CO2排出量ゼロ以下のセメントを用いたり、高炉セメント・ジオポリマーセメント(ローメンセメント)が挙げられます。最近は環境面に世間の注目が集まりますので、これらのような対策は非常に重要になってきます。
まとめ
今回はコンクリートの短所についてまとめて説明をしました。コンクリートには多くの長所がありますが、短所もいくつか挙げられます。長所は伸ばして短所を補うような設計をしていくために、コンクリートのことを深く知る必要があります。
この記事で挙げたコンクリートの短所をまとめると、
- 比強度が小さい
- ひび割れが入りやすい
- 施工期間が長い
- 解体が困難
- セメント製造時のCO2排出量が多い
でした。ぜひ何度か復習をして、理解を深めていってくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。